i-Constraction

女性技術者目線でみたi-Constraction

近年建設業界でも少しずつではありますが、ICT化の波がきているのを感じます。
これまでマンパワーに頼りがちだった業界が、情報通信技術によって変わっていくことが期待できそうです。

気づけば15年ほど土木関係で働く私から見て、建設業界の現状の課題と技術革新がもたらす効果を語っていきたいと思います。

i-Constractionとは

i-Constractionは、国土交通省が主体となって進めている建設分野のICT化の取り組みです。

建設業界ではかねてより人手不足の問題を抱えています。
「3K」と呼ばれるきつい、汚い、危険というイメージや低賃金が理由で若者が集まりにくい状態にあります。これに伴う高齢化も深刻です。

さらに、限られた人員で工期内に業務を完了させなければならないため長時間労働が常態化しています。

このような背景からテクノロジーの力を積極的に利用して、人手のみに頼らない新たな働き方を実現しようという動きが広がっています。

どのような技術があるか

i-Constractionの例として、以下のような技術が挙げられます。

ドローンや3次元レーザーを活用した測量・点検

ドローンに搭載されたカメラを測量に利用することができます。
空撮した写真は立体的なものを平面で表現しているため歪みがありますが、正射投影に補正をしたオルソ画像に変換して解析等に使用します。

またレーザースキャナーを活用することで一度に広範囲の座標をもつ点群を取得でき、これまで手作業で行っていた測量の作業の負担を大幅に削減することが可能となっています。

地理情報システム(GIS)を利用した解析

地図データにさまざまな情報レイヤを重ね合わせて、視覚的な検討を行います。

土地利用の状況や人口分布などの統計、災害リスク等が一目で確認できる図面を作成することができます。
また衛星写真や3DデータもGIS上で扱えるので、よりリアルな表現で地理空間を分析することも可能です。

BIM/CIMによる設計

従来の設計ではCADによる図面作成が中心でしたが、近年BIM/CIM利用の動きが広がっています。

図面を構成するパーツひとつひとつに属性データを付加していくもので、これまでは別4データで管理していた材料や数量等の情報をひとつのソフトで管理することができます。

これにより変更が容易となり、人的ミスによる資料の不整合も回避することが可能となりました。

ICT建機導入による現場作業の自動制御

人工衛生や3Dデータを建設機械と連動させることで、自動運転、自動制御を実現します。

これにより丁張りなどの工程を削減し、初心者でも安全かつ正確な施工をすることができます。

女性技術者として日頃思うこと

この仕事をしていると、男女の違いを感じる場面がたくさん出てきます。
体力面や家庭での役割などが原因で、どうしても男性と同じように働くことが難しいと感じます。

現場仕事についていくのが大変

内勤中心の仕事ですが、たまに測量や調査で現場に行くことがあります。
私が関わる仕事の現場は山の中。
斜面や山道を、測量機器を持ちながら男性と同じスピードで歩くのはけっこうハードです。

トイレや着替え、食事の速さなど気を使うことも多いです。
そして周囲の男性が気を遣ってくれているのも分かるので申し訳なく思います。

割り切った働き方になりがち

冒頭のほうでも書きましたが、長時間労働が多いこの業界。
女性の働き方は2択になる傾向があります。

家庭の事情などで残業が難しい場合は、非正規の仕事を選ぶ方が多いです。
案件は多い業界ですが、非正規だといつまで雇用が続くか分からず不安ですよね。

また収入も正社員より低くなりがちです。
技術を持っていて働く意思があるのに、泣く泣く非正規雇用を選ぶのはもったいないと感じます。

いっぽうで、プライベートの時間を割いて仕事を中心とした生活をする女性もたくさんいます。
私もそのうちの一人かもしれません。

我が家の場合は夫が理解してくれ、協力があるので生活が成り立っています。
シフト制の夫のほうが帰宅が早い場合が多いので、夕食作りを担当してもらっています。

それでも不器用な私は仕事と家事でいっぱいいっぱいで、子どもを設けるのは諦めてしまいました。
仕事と家庭、どちらかを選ばなければいけない状態は改善しなければならないと思います。

古い体制を引きずっている

かつての建設会社では、女性の仕事を作るために軽作業を振っていた一面がありました。
その名残なのか「女性の仕事とされていること」が多いのが気になります。

女性技術者にもスキルを磨くことが求められる一方で、雑務は相変わらずこなさなければなりません。

現場に出る機会が少ない分、電話や来客対応などをするのは全体のバランスから当然のことと思います。
しかしゴミ出しやお土産配りなど、各自がやれば仕事ではなくなるものまですべて「女性だから」という理由で頼まれてしまうのはしんどいものです。

男女の役割の差が縮まれば、このようなことは自然になくなっていくのではという考えがあります。

i-Constractionに期待すること

コロナウィルス蔓延以降、テレワークやワーケーション等の多様な働き方が認知されるようになりました。これにより、仕事と私生活のバランスがとれた働き方を望む傾向はますます強くなっています。

このような情勢の後押しを受けて、建設業界においても今後ますますICT化が進むと予想できます。

新しい技術により身体的な負担が減ったり、生産性が向上するならば利用しない手はありません。
女性技術者が働き続けるための救世主になりうると感じています。

このような柔軟な働き方が実現すれば、建設業への女性参入が増えるのではないでしょうか。
そして業界全体の人手不足も解消に繋がるのではないかと期待したいです。

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